はじめに MSX turbo Rの世界にようそこ。本書は、高速CPUと大容量メモリーを得て、見違えるほどパワフルになったMSXパーソナルコンピューターを、極限まで使いこなすために必要な下記のような内部情報を詳しく解説したものです。 1.内部を16ビット化し、これまでのMSXと比較して10倍以上の処理速度を発揮する高速CPU、R800の性能をぎりぎりまで引き出すテクニック。 2.MSX turbo Rに標準搭載されたPCM音源と、FM音源を使いこなすための情報とテクニック。 3.MSXを使いこなすためのに必須のSLOT機構のしくみと、取り扱い方法。 4.日本語を取り扱うソフトウェアの開発に必要な、漢字BASICの仕組み。 5.画面表示でテクニックを発揮するための、VDPの使いこなし方法。  MSX turbo Rは、従来機のアーキテクチャーを大きく変えることなく、CPUを16ビット化して飛躍的な高性能を実現した、はじめてのパーソナルコンピューターです。  ほかの機種では、8ビットから16 ビットに移行するときにアーキテクチャーをまったく変更してしまったため、8ビットのマシンで多くの人々によって開発されたソフトウェアやノウハウは、すべて捨て去られる結果となってしまいました。  私たちは、MSXの性能を引き上げるためにCPUを16ビットとすることは必要だが、そのためにMSXのために開発されたソフトウェアやハードウェアの資産、またユーザーのノウハウを捨て去るようなことは、してはならないと考えました。このことを実現させるためには、新しいMSXのためにZ80に上位互換なCPUが必要と考え、R800を開発しました。そして、これまでのMSXとの完全な互換性を実現するために、従来のZ80も新開発のR800と共に搭載した、MSX turbo Rを開発しました。  MSX turbo R では、このように従来のMSXとの上位互換性が理想的に保たれています。したがってユーザーは、いままでに積み上げられたソフトウェアの資産をそのままMSX turbo Rで実行するだけで、何倍もの性能の向上を手に入れることができます*1。また、ソフトウェアを開発するために必要な知識も、これまでのものをそのまま活用することができますが、本書で解説する若干のノウハウを利用することで、さらにマシンの性能を引き出し、群を抜くコストパフォーマンスを発揮するシステムを実現することが可能となるでしょう。 システム事業部第 1 製品統括部・統括部長 山下良蔵 *1MSX用の市販ソフトウェアは、R800で実行すると速度が速くなり過ぎ互換性が取れなくなるので、自動的にZ80が実行するために高速にならない場合があります。